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涙のあとに

―鳥は地に堕ちて―

「あ…」

窓の外に何か見つけ、思わず声が漏れる。
ほんの小さな声ではあったが、文秀はそれに気付いたらしく、咥えていた煙草の火を揉み消す。

「どうした」

そう問いかければ、しなやかな指はゆっくりと窓の外を指し示した。

「…鳥が」

口唇はぽつりと言葉を紡ぐ。

「鳥?」
「はい…鳥が今…」

しかし元述の指し示す先に、鳥は一羽も居ない。
第一今は夜なのだから、鳥が飛んでいるはずもない。

「鳥がどうしたんだ?」

もう一度問いかけると、元述は俯いてしまった。
微かだが睫毛が震えている。
僅かな沈思、そしてようやく返ってきた答え。

「………力尽きて…」

それは今にも泣き出しそうな、頼りない声だった。

「…そうか」
「はい……………」

何かを堪えるような表情。
しかしそれすらも、愛しいと思う。

「元述」

ゆっくりと、壊れ物を扱うようにそっと肩を抱く。
刹那、小さく肩を震わせたが、文秀の温度を背に感じ、少しずつ力を抜いていく。

「文秀、将軍…」

力を抜ききり、体を預けたところでようやく声が出た。
元述が落ち着いたのを確認し、その瞳を手で覆い隠す。

「泣くな」
「ッ…泣いてなど…」

確かに涙は流れてはいなかったが、文秀は何かを感じ取ったようだった。

「大丈夫、俺は此処に居る」

元述の奥底にある不安を、恐怖を、消し去ることは出来なくても、和らげてやりたい。

「あ………ぅッ…う……」

ついに泣き出してしまった元述を抱き、子守り歌でも歌うかのような優しい声で言葉を紡ぐ。

「大丈夫、だから、泣くな」
「しょ…ぐん…」

子をあやすように頭を撫でていると、ふと元述が本当の子供に見えた。
幼子が泣きじゃくる姿と元述の姿が重なったのだ。
頭を撫でながら、くつくつと笑いを漏らす。

「ほんと…泣き虫だな…」
「…!笑わないで…ください…ッ」
「いや、可愛くてつい、な」
「うぅ……」

返す言葉が見つからなかったのか、元述はふいとそっぽを向いてしまった。
そんな様子もまるで子供だな、などと考えながら、己の体ごと元述の体を横たえる。

「さぁ、もう眠れ。明日も早いのだろう?」

小さなキスをひとつ、そしてそのまま再び瞳を覆い隠す。

「おやすみ、元述」
「おやすみなさい…文秀将軍…」

愛しき人に優しいおやすみのキスを。
どうか悪夢に囚われることのないように。

投稿者の懺悔

は…激しく浮きまくりな予感…!っていうか既に浮いてるかも!!
こんな素敵なお祭りなのに根暗な話で本当に申し訳ないです…orz
でも愛だけは…愛だけは…!(笑)
元述が天然+不思議ちゃんになってしまっていますがお気になさらず…
というかキスがおまけみたいな扱いになってるのは気のせい…?
き、気にしたら負けですよね!
それではここまでお読みいただきありがとうございました!
みなさんお祭り楽しんでくださいねー!

コメント一覧

洸@管理人 2007年10月17日(水)21時27分 編集・削除

泣き虫元述たんだv やはり基本ですよね。きっと感受性が強すぎるんだと思います。強い剣士なのにそういう不安定なところも魅力なのに違いない。
そして不安な元述には将軍のキスが特効薬みたいですねv
ラストがとても甘々な二人に見えました。将軍はなんだかんだと元述には結局甘いんだから(笑)
投稿ありがとうございました!